その1 冬の夜

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残業続きで十分疲れ切っているはずなのに熟睡できない自分を恨みながら、 必要な分だけ小銭を持って部屋を出る。 「さむっ……」 その夜、俺は水道水では物足りず、 刺激のある炭酸が飲みたかった。 近くのコンビニまでは徒歩5分。 たかが5分と思うだろうが、今日みたいな寒い夜はやけに遠く感じる。 夜中の3時。もちろん、ひと気はない。 車道沿いにある歩行者用の狭い白い線の内側を歩きながら、 こんなに寒い中、外に出て来た自分をまた恨み始めていた。 「あれ?」 ふと、自動販売機の煌々とした光が目に入る。 「こんなとこにあったっけ?」 今の家に住み始めて約半年になるが、始めて目にした気がする。 「最近出来たのかな? でも、ラッキ~!」 いつもは自販機なんて見ても何とも思わないが、 今日は救いの神のように感じていた。 俺は自販機の前に立つと迷うことなく、 大好きな黒い炭酸のペットボトルのボタンを押した。 ガタンッ しかし、出てきたのは“?”マークのついた缶だった…… 「え?」 よく見ると、押したはずのボタンの横にこの“?”マークの缶が陳列されていた。 その瞬間、小銭は必要な分しか持ってきていないことに絶望する。 神なんかじゃない、悪魔だ。 「なんだよ!!!!!」 怒りに任せて、大きな声を出してつい自動販売機を蹴る。 その時、また白い影が横切った気がした。
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