その1 冬の夜

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薄れゆく意識の中、耳元でささやく声が聞こえる。 「今日は寝る時からずっと一緒にいたのに。ふふっ」 イタズラっぽく笑うその声は、幼い頃に事故で失くした俺の妹によく似ていた。 (お前こそ、おかえり……) 朝、起きると俺は無様に玄関に横たわっていた。 夢か現実かもわからないまま、朝シャンを終えると、 小さなキッチンに、“?”マークの缶は無かった。 俺が2度目に買ってきたはずの黒い炭酸のペットボトルさえも。 (夢、だったのか……?) 出勤前に昨夜の自販機も探したが、見当たらなかった。 そして……俺が見たのは妹の姿だったのだろうか。 仕事が忙しくて、遠く離れた実家にもなかなか帰れていなかった。 (次の休みに帰るか……) そんなきっかけをくれた、ある寒い冬の夜の不思議な体験。
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