ただのクラスメイト

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 青斗の心臓は早鐘を打ち出す。  幽霊なんていないと内心では常に思っていたが心霊番組を見るのは大嫌いだし、怖い話も聞きたくなかった。  もし自分がその場面に出くわしたらと思うと背筋に冷たいものが走っていたし、今この場面では背中は大洪水だ。  でもどこかで幽霊はいると信じている自分がいた。  大きく深呼吸をしてからゆっくりと目を閉じた。一度冷静になるために。  見間違いだ、見間違いだと心の中で何度もつぶやきゆっくりと片眼ずつ開けた。  怖くて視界を狭めてしまう。もし、ここでまだ足が残って居たら走ってグラウンドに行こう。  俺はそんなキャラじゃないのは百も承知だがこの恐怖を一人で抱え込むのは無理だ。  天井に向けていた視線を徐々に下ろしていく。カーテンレールからカーテンの中心部へ。  そしてカーテンの裾へ……。  細い視界で辺りを見渡したが足らしきものは見当たらなかった。 「やっぱり見間違いだ。幽霊なんていないいない」  無理に声を出して笑って恐怖をはねのける。真面目腐った俺の心は確かに見たぞと脳に反発してくるが脳は嘘とつけと心に反発する。  やはり幽霊なんて居るわけない。いたらきっとあいつは顔を出してくれるはずだから。  まだ全身を恐怖が包んでいるが無性に腹が立ってきてカーテンを勢いよく掴んだ。 「ほら、誰もいないじゃないか」  誰に聞かせるわけもなく声が大きくなってしまう。どこかにカメラが隠されていたかもしれない。  ドッキリ大成功のパネルが出てくるのはまだかと期待している自分がいる。  手が震えて中々カーテンを縛れなかったがようやく縛り終え回れ右をする。 「やっほー」 「うわああああああ!」  青斗の大絶叫と共に空から大量の雨粒が降ってきた。  目の前に有り得ない人物が立っている。 「嘘だろう……」  そこには数カ月前にに亡くなった虹川赤彦が立っていた。
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