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笑いながら彼は言ったが全然笑っていなかった。目の奥が鋭く光っていた、無理やり上げた口角が歪んで見える。
怖かった。両足で踏ん張っていないと今にも座り込んでしまいそうなほど赤彦の表情は威力があった。
まだ正直信じられていない。上手く呑み込もうとしてもなかなか喉を通っていってくれない。
それに気が付いたのか赤彦は腕を組んでから今度は爽やかに笑った。
「そんなに信用していないんだったら証拠を見せようか」
何か魔術を掛けられるのではないかと一歩ずつ後退る青斗。赤彦は青斗の方へ走って向かってくる。
何をするつもりだと青斗は両手で顔を塞いだがその瞬間赤彦は青斗の体をするりと通り抜けた。
「どう?俺が死んだのは紛れもない事実」
得意げな顔で話しかけてくるが青斗は開いた口が塞がらない。
体をすり抜けた。青斗はその瞬間を見ていた。指先の隙間から自分の体を通り抜ける赤彦が見えた。
すり抜けられた感覚は全身を爽やかな風が通り過ぎたスッキリとした感じだった。
マジックだったら拍手喝采、スタンディングオベーション状態なはずなのに薄れていった恐怖値がどんどん上昇していく。
「やっぱり君は死んだんだよね」
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