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「君も俺の葬式出てたじゃん」
「そうだけどさ……」
これ以上返す言葉が見当たらなかった。しばらくの沈黙。壁掛け時計と雨音だけが響く。
野球部の声は聞こえてこない。雨が降ってきたから朝練は中止したのだろう。
雨粒が吹き込んできている。窓を閉めなければと思うが体が動かない。だって目の前には幽霊の赤彦がいるし、怖いし。
青斗の頭に一つの物語が浮かび上がった。彼が目の前に現れた理由が何となくわかった気がする。
「ねえ、俺の前に現れたのって何か意味があるからなんだろう?」
「よくわかったね!そうなんだよ。流石秀才君」
赤彦は褒めるように胸の前で拍手をしている。パチパチという音は聞こえてこない。
「それってさ、タイムスリップ系じゃないか?」
「え?」
青斗は幽霊相手に自分の仮説を得意げに話していく。
「本来ならば今日は十一月十五日だけど今はタイムスリップして君が死ぬ前に巻き戻っているとかではないのか?それで君を死なせないようにする、そうすれば君は生き返ってこれるって言うストーリーだろ!」
赤彦は口をぽっかりと開けて青斗を見つめた。そしてまた腹を抱えて笑い出した。
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