君に頼みたいことがある

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 一日の授業を終え、各々教室を去っていく。部活へ行く者、遊びに行く者、家に帰ってゲームをする者、友達同士遊びに行く者。  青斗は家に帰って勉強する者として、一つ大きく背伸びをして教材を鞄へとしまう。  一日の仕事を終えたクラスメイト達は全員晴れやかな顔をして教室から去っていく。  今はこんなに騒がしいのだが赤彦が死んでからの教室は色を失ったように静かだった。  しかしそれもどうだろう、一カ月も経てば彼は元からいなかったように教室は五月蠅さを取り戻した。  赤彦には特別仲の良い友人はおらず、彼の死を引きずっている者は日に日に減っていった。  葬式会場で泣いていたのはその場の雰囲気と、身近な人が亡くなった一瞬の寂しさのせいだ。  数カ月も経てば赤彦の元の席は窓側の一番後ろの席へと移動していた。  赤彦という名前もここ最近聞いたことが無かった。  思い出というものは上書きされる。高校生という青春のど真ん中にいる青斗たちの思い出は毎日毎日上書き保存されいく。  そんな膨大な情報の中でクラスメイトの端くれだった赤彦は思い出の中でも端っこになってしまったのだろう。  少し可哀想だと思ったが、どうせ青斗が死んでしまったとしても赤彦と同じ結果になっていただろう。  青斗の場合は自分がそうなっても構わないと思っている。  友情、絆、なんて見えない信頼関係を築き上げるのは疲れるほか何もない。
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