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第1章*1* 非日常への入り口
ーーカラン…
飲み干したグラスを置くと、無くなったことを主張するように氷の音が響く。
久々に訪れた″ルシウス″
行きつけのバーは、落ち着いた雰囲気が気に入ってて仕事に疲れたら必ず立ち寄る憩いの場所。
「ねぇ、聞いてる?本当このままだとヤバいよね。もう27になったってのに彼氏の一人も居やしないなんて。」
隣でモスコー・ミュールをグイッと呑みながらため息をつく彼女の名は、長崎 沙羅。
そーだね、なんて生返事しつつ、次何頼もうかな…なんて考えていると、沙羅はもう一つため息を吐いた。
「いーな、彩音は。本命がいるもんね。原田センセーが」
「っごほッ、何言ってんの!原田先生はそんなんじゃないし。」
「へぇ?そうかな?彩音には、ト・ク・ベ・ツ優しい感じがするけどねー?」
「平等な優しさだよ、本当に。」
ニヤニヤしながら追求してくる沙羅の視線から逃れ、左腕に眼を向ける。
「あ、やばっもうすぐ終電じゃん。そろそろ行かないと。沙羅はどーする?」
「アタシはまだもーちょい飲んで帰るね」
「了解。じゃあ、また連絡する」
そう言ってお会計を済まして店を出た。
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