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ーーーガブッ
「、!痛ってー!」
このアマ、ふざけんなよ!と後ろから叫んでいるが、無視して無我夢中で全力疾走。
「っはぁ、はぁ、はっ」
細い路地裏に逃げ込んで一息ついた後、そろーっと覗けば。
男がキョロキョロして違う方向へ……行かない。むしろ、近付いてくる。
やばっーー、内心バクバクの心臓が響くんじゃないかと感じる程緊張がピークだ。
ここで捕まったら今度こそ、ヤられる。
だけど、もう逃げ場がない、行き止まりだ。
ジリジリと距離を詰めてくる、ライオンに標的にされた子鹿の気分だ。
ギュッと眼を瞑ると、ドンっと壁に押し付けられた感覚と唇に生暖かい感触が降ってきた。
…キスされてる?
「…んっ、」
抵抗するのも忘れて思考停止した私に構う事なく、更に深く舌を差し込んでくる。
ハッとして両手で引き剥がそうとするとその手を纏め上げ、なおもキスを落とす謎の男。
「…行ったか」
その男の発した言葉でハッとした。
「あんな男にやるのは勿体ねぇからな。」
ニヤリと意地悪く微笑んだ目の前の男。
切れ長の瞳にスッと通った鼻筋、色っぽい口唇…今まで見たことのない端正な顔立ちに一瞬目を奪われてしまった。
何でキス ーーー?
…あ。そうか、これはあの男を追っ払うためにしてくれたんだ。
「あ、あの…。ありがとうございました、助かりました。」
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