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「キスしたのに、礼言われるなんてな。」
ふっと笑みを漏らすその姿さえ、絵になる。
はっ、そうか。初対面でキスされたのに、何でお礼なんか言ってるんだろ。
「じゃ、じゃあこれで失礼しまーーー」
もう追ってきた男も居なくなったし、早くこの場から退散しようと行動しようとした身体は目の前の男によって阻まれた。
壁に押さえつけられさっきと同じ体勢に加え、足の間に男の足が入り身動きが取れない。
…これじゃあ、あのホテルに連れ込もうとした男からこの目の前にいる男にトレードしただけでヤバい事に変わりはないんじゃ…。
とりあえず無駄だと思いながらも腕を振り払おうとするもビクともしない。
「諦めな、この俺に捕まったら逃げらんねぇから。」
せめてもの抵抗に顔を横に向けると、首筋に顔を埋めてくる。
「…っや、い…った」
男が離れると、真正面に向き直しキッと睨みつける。
「へぇ…、いいなその目。 お前、名前は?」
楽しそうに、でも狙った獲物は逃がさないといった野獣の瞳に金縛りにあった様に動けない。が、この男に名前なんか教えたら駄目だと自分の中で警告音が鳴り響く。
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