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優がバーテンダーと笑い合うと、席を立ち、下半分が琥珀色のオールド・ファッションド・グラスと共に戻ってきた。
「ごめん、ごめん、つい向こうで話し込んじゃって」
そんな暢気な様子を見守ると、少し意地悪をしてみたくなった。
「桜木さんが付き合っても彼女と続かない理由、なんとなくわかったんですけど」
「え? いきなり?」
少し驚いている優と「えっ? なになに?」と興味津々な榊が、真由稀を覗き込む。
真由稀は、にっこりと微笑んだ。
「教えてあげません」
「えーっ、なんだよ、それ!」
「なんで榊さんが残念がるんです?」
「いや、俺が考えてることと同じなんじゃないかと思って」
「ああ、なるほど。……そうかも知れませんね」
「おーっ!」
榊が感慨深い声を出した。
「初めて、北埜さんと俺の意見が一致したな!」
「そう言えば、そうですね」
優だけが、きょとんとした顔で、二人を見つめている。
その顔が見られて満足だとでもいうように、真由稀は笑っていた。
「教えてなんて、あげませんよ。そこまで、私、お人好しじゃありませんから。自分でなんとかしてくださいね。強いて言えば、……そうですね、あんまり無自覚なのもどうかと思いますよ」
ますます優はわからない顔になり、榊は可笑しそうに笑いを堪えていた。
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