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「あなたも、彼氏一筋だとか、結婚したら旦那さんに一筋なだけじゃなくて、こういうところでいろんな男を見た方がいいわよ」
銀座の一角にある小さなスナックで、五〇歳代と思われるママは、煙草の煙を吐いた。
どういう意味かと首を傾げながらも、華やかに巻かれた髪、少し厚い化粧の彼女を、綺麗で大人の女だなぁと思いながら、蓮華は見蕩れていた。
カウンターには、蓮華の他に、いわゆるお嬢様系と呼ばれるような好印象の女子が二人いた。曜日によっては、若い主婦や女子大生もいるという。
カウンターを隔てて接客をするという他に詳しい説明をされないまま、開店時間となった。
数人の中年、老年の男性客がやってくる。
蓮華の前に座ったのは、知的でそこそこ顔の整った中年男性客だった。ラフなジャケットからも、身なりには気を遣うように見える。
簡単に挨拶を交わすと、男が注文した。
「ロイヤルハウス・ホールドを水割りで」
イギリス王室からの依頼で作られたというそのウィスキーは、一本が三万円以上する。蓮華の祖父も、たまにバーで飲んでいた。
世界でも、バッキンガム宮殿とスコットランドのローズホテルのバー、そして、日本でしか飲めない貴重なものだった。
そんな代物がこのようなところにあるとは蓮華も驚いたが、それ以上に、この客が、これを水割りで飲むことに、一層驚いた。
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