Ⅳ. 第3話 王室ウィスキーとウォッカとママ(*)

5/9
前へ
/320ページ
次へ
「でも、シェイカーを使うと大変よねぇ」 「ああ、シェイカーを使わなくても出来るものはたくさんあります。ウォッカの量も正確に計らなくても大丈夫ですし。例えば、オレンジジュースと割る『スクリュー・ドライバー』とかは……あ、レディー・キラーだけど、ここには女性のお客様は……」 「大丈夫よ、お酒慣れしていない若い子は来ないから。来るとしても、おばさんくらいよ」  ほぼママの友達やその(つて)である。 「グレープフルーツジュースで割って、グラスの縁に塩を付け(スノースタイル)れば『ソルティ・ドッグ』になりますけど、塩を付けないと『グレイハウンド』『テールレス・ドッグ』『ブルドッグ』っていって、尻尾がないとか見えない犬って意味になるみたいで。それでも充分美味しいです」  グラスの縁にレモンの果肉をなすり付けてから、皿に平に盛った塩を、グラスを逆さにして付けるのだと、蓮華は説明を加え、チーママたちは、「そうやるのね!」と感心した。 「トマトジュースで割るのもいいと思います。ウォッカとトマトジュースに塩胡椒、ソースとかタバスコ入れたりすると『ブラッディ・メアリー』になります。クラトマジュースっていう、トマトジュースに(はまぐり)のエキスが入ったものがあるんですけど、それで割ると『ブラッディ・シーザー』になって、トマトの冷製スープみたいでこっちの方が飲みやすいです。トマトジュースと一緒に飲むとアルコールの代謝が促進されますし、アルコールの血中濃度も約3割低下して、体内からアルコールが消えるまでの時間が50分も早まるそうなのでオススメです」 「トマトの赤色のリコピンは強い高酸化作用があって、癌や動脈硬化の予防に役立つって言うしね。二日酔い予防にも良さそうね」  と、ママが頷いた。  チーママたちも感心して「美味しそう!」といった。 「簡単だから、誰でもすぐに作れますよ!」  蓮華は乗り気であったが、ママは、にこやかに「考えておくわね」と言ったきりであった。
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加