Ⅳ. 第3話 王室ウィスキーとウォッカとママ(*)

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「隠れ家的なバーって言われてたけど、実は()()()()()()()()()ってこと?」 「そうなっちゃうよね。あの後、スナックの経営も傾いていったのは、経理が大雑把だったのもあったらしい。さらに、ママは、自分の旦那さんの知らない間に通帳から現金を全部引き出して、多分その男性客と逃げたんだろうって。財産目当てで年配の人と結婚したらしくて、旦那さんは落ち込んでいて、裁判を起こす気にもなれないらしい」  蓮華は目を見張るばかりだった。  淡々と優が語るうちに、海の前まで来ていた。  無言で、夜の黒い海を見据える。 「今働いてる事務所を通して見ても思うけど、音楽やる女の人とか気の強い女の人って素敵な人も多い一方で、行き過ぎて、大人しい旦那さんをないがしろにしているような人も、いるにはいるのよね。そういう状況を目の当たりにして、自分も気をつけなきゃって、つくづく思ったわ」 「女の人が一人でお店をやるというと、色眼鏡で見る人もいる。バックにパトロンがいるんじゃないかって。ちゃんと経営している人もいれば、例のママみたいな人もいる。酒場を経営するなんて並大抵のことじゃないし、時には欲望にまみれた人間の汚くて嫌なところも目にしてしまう。僕としては、友達には、特に女友達には、あんまりそんなところにいて欲しくないと思ってる」
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