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そんなやり取りの後、蓮華が薬や必要なものを持って、楓のマンションを訪ねた。
「いいわね、音大の近くだと楽器OKなマンションが多くて」
「音大生じゃなくても、たまたま入れたよ」
ベッドで布団に包まり、顔だけ出して、楓が応えた。
リビングには電子ピアノが一台と、キーボードやシンセサイザーが何台かあり、一つはパソコンとケーブルでつないでいる。足元には音楽雑誌が無造作に置かれていた。
「ここに置いておくから、おなかが空いたら食べてね。じゃあ、帰るから」
「ちっともやさしくしてくれない」
「お粥作ったじゃない。食べさせて欲しいの?」
ふてくされている楓を見ながらおかしそうに笑うと、蓮華は、粥を冷ましながら、楓の口へと運んだ。
食べ終わり、薬を飲んだ楓はベッドに横になると、すぐに眠ったようだった。
彼に布団をかけ、後片付けをした蓮華は、しばらく彼の寝顔を見つめていた。
翌朝になると、薬が効いたらしく、楓の熱は下がっていた。
うっかり眠ってしまった蓮華は、床に寝ていたせいで冷えたのと、風邪が移り、熱が出ていた。
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