Ⅳ. 第5話 ミュージシャンの彼

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「そんなところで何もかけないで寝てたからだよ。ベッドに入れば良かったのに」 「何言ってるの。狭いんだし、病人に寝苦しい思いさせるわけにはいかないでしょう?」  動けるようになった楓には、蓮華を見る目にからかうような余裕が現れていた。  楓のためにと、ちょうど買っておいた冷却剤を額に貼りながら、蓮華が、楓の作ったうどんを一本ずつ、つるつると食べる。 「……かわいい……!」  ちゅるんと、うどんを吸い込み、もぐもぐしている蓮華の唇に口づける。 「ダメだって。風邪振り返すよ?」 「大丈夫だよ。それに、蓮華さん、熱くて、なんかエロい……」  ラグの上に、蓮華を仰向けに押し倒す。 「だめだよ」 「ちょっとだけ……」 「……ん……だめ……!」 「弱ってると、かわいい」 「ヘンタイ!」  蓮華の唇は濃厚な口づけに支配され、黙らされた。 「もうだめ! 頭痛い!」  楓が我に返ると、蓮華の顔が一層赤い。 「熱が上がったじゃないの!」 「ごめん」  さすがに楓も焦ったが、翌日には熱が下がり、スッキリした顔になった蓮華は「ぐっすり眠れたからかなぁ」などと笑っていた。
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