Ⅳ. 第5話 ミュージシャンの彼

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 それを境に、楓の誘いで蓮華が泊まることが増えていき、そこから仕事に通うようになった頃であった。 「僕と付き合ってるのに、なんで男友達のとこに行くの? 僕だけでいいじゃん」 「将来やるお店のことで打ち合わせしてるって、何度も説明してるでしょう?」 「なんであの人の家にまで行くの?」 「お仕事中に訊くのも悪いから。家に行った方がはやいし」 「本当に優さんとは何でもないの? キスもしてないの? 酔ったはずみとかでも?」  蓮華は呆れて、溜め息を吐いてから応えた。 「そんなことするわけないでしょ?」 「……僕の方が男として好き?」 「決まってるでしょ? でも、ヤキモチもあんまりクドいとウザいんだけど」 「ええっ!」  たまに帰る新香とのアパートで、蓮華がイライラしながら、楓が優とのことを詮索するのが面倒だと、つい愚痴を言った。 「十九歳の男子にしてみたら、優さんの存在は酷だわー。だって、自分が出会う前から、カノジョの近くに大人の男がいるんだよ? それが今後ずっと仕事で毎日隣にいることになると思えば、いくら友達だって言ってもさ、気になっちゃうのは当然なんじゃないの?」  新香に諭された蓮華は、翌日、仕事の帰りに、楓のマンションに寄った。 「キツいこと言ってごめんね」  背伸びをして、ちゅっと唇が音を立てた。  楓は、蓮華の身体を強く抱きしめた。
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