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それを境に、楓の誘いで蓮華が泊まることが増えていき、そこから仕事に通うようになった頃であった。
「僕と付き合ってるのに、なんで男友達のとこに行くの? 僕だけでいいじゃん」
「将来やるお店のことで打ち合わせしてるって、何度も説明してるでしょう?」
「なんであの人の家にまで行くの?」
「お仕事中に訊くのも悪いから。家に行った方がはやいし」
「本当に優さんとは何でもないの? キスもしてないの? 酔ったはずみとかでも?」
蓮華は呆れて、溜め息を吐いてから応えた。
「そんなことするわけないでしょ?」
「……僕の方が男として好き?」
「決まってるでしょ? でも、ヤキモチもあんまりクドいとウザいんだけど」
「ええっ!」
たまに帰る新香とのアパートで、蓮華がイライラしながら、楓が優とのことを詮索するのが面倒だと、つい愚痴を言った。
「十九歳の男子にしてみたら、優さんの存在は酷だわー。だって、自分が出会う前から、カノジョの近くに大人の男がいるんだよ? それが今後ずっと仕事で毎日隣にいることになると思えば、いくら友達だって言ってもさ、気になっちゃうのは当然なんじゃないの?」
新香に諭された蓮華は、翌日、仕事の帰りに、楓のマンションに寄った。
「キツいこと言ってごめんね」
背伸びをして、ちゅっと唇が音を立てた。
楓は、蓮華の身体を強く抱きしめた。
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