第二章)さよなら…そして。

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「さよなら…。彼女と幸せになってね」 陽子の体が左右に揺れたかと思うと、その華奢な体が宙に浮いた。 ちょっと待って欲しい。 ちょっと待ってくれ!! 追いたいのに体が動かない。それは、外部からの力なのか、追ってはいけないという自らの無意識の力なのかわからなかった。 そうこうしているうちに、彼女はボクの手の届かないところまで行ってしまった。 そして陽子は上空からちらりとボクを見つめた後、一瞬にして消え去っていった。 いまボクはベッドの中にいる。 数分後か、数十分後か、それとも数時間後かには眠りに落ちるだろう。 まだ陽子との記憶は鮮明に思い出せる。 遊園地で無理やりジェットコースターに乗せられ、ずっと絶叫してたこと。 海に行ってサングラスをかけたまま寝てしまい、逆パンダになったこと。 ドライブ中、運転しながら熱唱しているのを隣の車に見られて、恥ずかしかったこと…。 どの場面でも、隣で笑っていてくれた陽子。 大学のキャンパスでもいつも二人一緒だったのに、噂にもならなかったのは彼女がそういう『存在』であり、そう思われない何かしらの力を働かせていたのかもしれない。 いつも明るく元気な陽子。 その全てが、朝になれば消えてしまうというのか。 陽子…。 明日、もう一度だけボクの前に姿を現して欲しい。 君の記憶がすっかり消えていて、気づかずにすれ違うかもしれない。 でも、ボクは君に気づく自信がある。 君の姿を見た途端に、全ての記憶を取り戻す自信がある。 ボクには君が必要なんだ。 だから、陽子…。 さようなら。 また明日。
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