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そんな中途半端なところに立っていた僕は、意見を言えるほど偉くない。
しかし、中途半端だったからこそ、魔王様のその大きな背中をずっと見てきた。
しっかりとは見えないが、視えないわけでもない。
ぼんやりでも見える距離でしっかりと倒れないように足に力を入れて見てきた。
イリスの執事として、元奴隷として、捨てられた一人の人間として。
『かっこいい』と思っていた、今も思っている。憧れの人が、
下を見ない魔王が――!
『おい、儂だって生き物や。失敗を犯すこともある』
ふっと鼻を鳴らした魔王様。
『そうや。お前にいろいろと忠告をしたいところだが、どうやら儂に時間はあまり残されていないようだからな。手短に言うぞ』
そんな……時間があまりって、縁起でもない……。
が、そんな戸惑いを見せる理性を無視して、耳を傾けた。
『いいか? これからは執事。お前とイリスの好きなように生きろ。儂みたく悔いを残さな』
ドゴオォォォォオオンンンン!!!
爆発音が聞こえ、魔王様の声をかき消し、台風並みの風が大広間から吹き荒れた。
飛ばされそうになる身体を脚で踏ん張り、耐える。
『おいおい、魔王よ。だぁれと話してるんだよ? あと3分もすれば死骸になる奴がよオォォオ!』
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