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なるほど。心を読むとは声だけで十分なんですね。
『そうか。それにしてもお前、儂が今戦っていることを忘れてはいないか?』
えっ、はい。それはもちろん存じておりますよ。
「僕が大広間に足を踏み込めば、あっという間に赤に染まることも、しっかりと理解しています」
嗚呼、確かに怖いです。『死』がドアの向こう側にあるのだから。
さて、凡人代表として宣言しよう。
『死とは、一周回って怖くない』、と。
生きたいと願うから、死が怖い。
なら、逆に死にたいと願うならどうだ。
どんな高所だろうが、どんなに剣を首筋に突き付けられたとしても、喜んで受け入れる。
震えなどなく、ただ死が迎えに来るのをじっと待つだけ。
たったそれだけでいい。
そこに一切の迷いはなく、恐怖もなく、冷静沈着に。
体験談をもとに自信をもって、自分が納得するように説明をした。
しかし残念ながら、僕は死ぬことを願わない。願うのは生きること。
――いや、魔王様の意思を最後まで貫き通すことを誓った。
だから、僕だけでも生きないといけない。
魔王様が最初で最後の僕に対する『願い』なのですから。
強制ではないものの、どうしても強制に感じてしまう。
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