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解剖実験といった、血を見る類だったらどうしようかと、蘇芳は内心焦っていた。その手の実験に参加するのは、蘇芳にとっては自殺行為に近い。
蘇芳には、誰にも知られたくない性癖があった。
心理学を学べば、もしかすると解決の糸口を掴めるかもしれないと思って、心理学科を志望している。
「あ、ここだ」
山田が指さす先には、段ボール箱で作られた、大きな看板が置かれていた。
看板には、いわゆるデコ文字で「化学研究会主催 オランダの涙を作ってみよう!」と書かれ、既存のアニマルキャラクターを真似たイラストが描かれていた。
化学研究会という、いかにもお堅そうな研究会の名称と、この看板から受けるイメージがあまりにもかけ離れすぎて、蘇芳は小首を傾げた。
「遠慮なく入ってよ」
にゅっとドアから顔を出した男子学生が、やや強引に蘇芳たちを部屋に招き入れた。その傍らに座っている女子学生が、軽いウェーブのかかった髪を掻き上げながら微笑んだ。
「やだぁ。ごめんね、この人、強引で」
勝気そうな瞳に、長い睫毛が印象的だ。
ふたりの学生は蘇芳たちが室内に入って来たのを見届けると、入り口の脇に置かれた椅子に座って雑談を始めた。化学研究会に所属する学生と思われるが、白衣のボタンを閉めずに羽織っている様子が、少しだらしなく見えた。
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