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いきなり神社と自分の話をし始めるおじいさんに、俺は何と言っていいか分からず、ただ「そうですか」とだけ答える。 「して、今日はどうしてまたお参りに? 何か理由がなければここへ来ることもなかっただろう?」 ストレートな質問に、俺はどうしたものかと思ったが、これも何かの縁だと思い事情説明した。 「ほう、靴が脱げないと。 それはまた不思議な話じゃな。 で、その呪いを掛けられたとして、そうなったことに何か思い当たる節はないのか?」 「思い当たることですか? うーん、特には何もないですね。 たまたま露店の靴をもらっただけで、店主の顔は見えませんでしたけど、その店主から恨まれるようなことは何も」 「そうか。 となると、その靴自体が何の因果か分からんが、お前に何か伝えようとしておるのかも知れんな」 「伝えようとしていること?」 「そうじゃ。 時に物には命が宿ると言われておる。 もしその靴に命が宿っとるとして、意図的にお前さんから離れようとしていないのなら、それが悪意であれ善意であれ、何かしらの思いがあってお前さんとおるのじゃろう」 俺にとっては善意でのことだろうが、脱げない靴に対しては悪意としか受けとれず、何となく靴を睨んだ。 「何にせよ、しっかりと考えることだ。 そうすれば自ずと道は開ける。 考えない者、待つだけの者には何も訪れん。     
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