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「え?僕ですか?」
「そう。君以外今ここに誰もいないでしょ?
で、買ってく?」
正直露店は怪し過ぎて買う気はなかったが、見るだけ見てやるかとスニーカーを手に取った。
メーカーは『H2n』とインソールに書かれており、どこのものか分からなかったが、黒で統一されたデザインは意外にも俺の好みだった。
「履いてみなよ。
サイズが合わなきゃ意味ないでしょ?」
男に促されるまま俺は頷き、スニーカーを履いてみた。
「あ、ピッタリだ。
それに、なんだこの履き心地。
履いてるのに履いてないみたいに、足に馴染んでる」
「それがうちの売りだからね。
履いたら二度と脱ぎたくない程のスニーカー、略してH2n。
どう?」
正直心の中ではめちゃくちゃダサいと思ったが、苦笑いをしながら「へー、意味深いっすね」と、返した。
「ちなみに、これいくらですか?」
ネーミングセンスはゼロだが、それを隠してしまえばその他は最高のスニーカー。
値段次第では買ってもいいかなと思い聞いてみる。
「そうだね。
お兄さんが大切に履いてくれるならタダでもいいよ」
「え?タダっすか?
いや、それはさすがに悪いですよ」
「いいのいいの。
お兄さんならそのスニーカーを"肌身離さず"履いてくれそうだから」
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