七転八倒

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七転八倒

男に言われるがまま、俺はスニーカーをタダで貰ってしまった。 「せっかくだからスニーカーを履いて帰りなよ」と言われ、俺の足元には新品の黒いスニーカーが見える。 「それにしても気前が良い人だったな。 でもこれで、バイト代はまた違うのに使えるし儲けたな」 ルンルン気分でスキップなんかしてしまう俺の足取りは軽く、気づけばあっと言う間に一人暮らしのアパートに着いた。 玄関の扉を開け、何足か無造作に置かれた靴を足で払うとスニーカーを脱ごうとした。 しかし、、、 「あれ?中々脱げないな?」 俺は玄関に座り込み、思い切りスニーカーを引っ張る。 「んーー。 ウギーー!! ハァハァ、駄目だびくともしない」 仕方なく今度は靴紐を解こうとするが、これまた解けない。 「あれー?そんなに固く結んだつもりないんだけどな」 あの手この手で挑むが、緩む気配もない。 「ちくしょー、何なんだよ」 次第にイライラが募る。 「解けろ、解けろ、解けろー!!」 ドサ 俺は玄関に大の字になって倒れた。 「あー、駄目だ。 確か、あの店主の男、「履いたら二度と脱ぎたくない」とか言ってたけど、「履いたら二度と脱げない」の間違いじゃないのか?     
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