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診断結果
「土屋さーん、土屋直樹さーん」
「はい!」
「どうぞ、診察室へお入りください」
俺は診察室と書かれた札の部屋に入る。
友達と別れた後、友達に言ったように病院に来ていた俺。
何科なのか分からなかったが、とりあえずそれっぽい整形外科にやってきた。
診察室に入ると、50代くらいの先生が椅子に座って待っていた。
「えーと、土屋さん。
今日はどうされました?」
恥も外聞も捨て来たものの、やはり中々言い出せない。
「ん?どうされました?」
「いや、あの。
実はですね、、、」
「何か言いにくい事でも?
医者には守秘義務がありますから誰にもいいません。
それにはっきり言って頂かないと、こちらも診察のしようがありませんから」
先生の言葉に俺は意を決し事情を説明した。
「実はですね。
スニーカーが脱げないんです」
「はい?今何と?」
「いや、ですから、スニーカーが脱げないんです。
今履いているこのスニーカーが」
先生に見えるように黒いスニーカーを前にグッと出す。
「はぁー、脱げないですか」
顕かに呆れている様子の先生。
だが、さすがに医者だ。
スニーカーを念入りに見始めた。
「うーん。特に変わったものではなさそうですが、引っ張てもいいですか?」
「はい、大丈夫です」
「んーー。
うん、脱げませんね。
紐は?んー、これまた解けないですね。
これ、切っても?」
「いいですけど、たぶん切れません」
「んーー。
切れませんね。」
先程の気の抜けた感じに少し苛立ちを覚えながらも、早くどうにかしてくれという気持だけが膨らむ。
「どうです?」
「そうですね。
ちょっとレントゲンを撮ってみましょう」
そう言われ、レントゲンを撮るが結果は異常無し。
「いたって普通のスニーカーですし、足にも異常はなさそうです。
そうなると、これは、、、」
「これは?」
もったいぶる先生に少し体を前のめりにした。
「いや、私は医者ですから、非科学的なことはあまり信じる質ではないんですけどね。
これはもしかしすると、何かの呪い的なものかもしれませんね」
診断結果「呪い」
お大事にと言われながら病院を後にするが、何をどうお大事にすればいいのか分からず、俺は途方に暮れた。
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