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ケンちゃんは通学路から外れて、人気のない路地に入っていった。
自動販売機を見つけると、ケンちゃんは定期入れを端末にかざし、ペットボトルのお茶を買った。中身を側溝に捨てて、ぼくを見すえる。
「猫、出せよ」
ぼくはランドセルからトラ丸の入ったペットボトルを取り出した。ケンちゃんはそれをひったくるように奪うと、オレンジ色の液体を一滴もこぼさずに移した。
「ほらよ。半分こだ」
底一センチに減ったペットボトルをぼくに渡してきた。
(トラ丸がまた減ってしまった)
ぼくはうつむいた。すごく悲しかった。
「……ねえ、誰に使うの」
ケンちゃんは「兄ちゃんだよ」と吐き捨てるように言った。
そして、ぼくに目をやった。
「それと――おまえにな」
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