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その缶ジュースをくれるのでもいいぜ、とケンちゃんは近寄ってきた。ぼくは思わず身じろぎし、缶をごとんと足元に落としてしまった。
「ばか、なにやってんだ! もったいねえ」
ケンちゃんは飛びつくように缶を拾い上げた。中身はほとんどコンクリートにぶちまけられている。苛立ったようにぼくを睨み上げたその目は、子どもとは思えない暗い光を宿していた。
「猫、これだけじゃねえよな? まだ持ってるだろ?」
ぼくが黙り込んでいると、ケンちゃんは「来いよ」と、くるりと背を向けて歩き出した。ぼくはその後をとぼとぼとついてゆく。
ケンちゃんと連れ立って歩くなんて夢のようなはずなのに、まるで引っ立てられた罪人のような気持ちだった。
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