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「大丈夫ですよ、新井さん。……昔は制服の準備とかが大変だったって聞きますけど、今は普段着で式に参加するだけですから」
「おや、今の光天学園は入学式も私服でOKなんだっけ? あそこに入学する子に部屋を貸すのは久しぶりだから、知らなかったねえ。歳を取ると、時代の流れに取り残された気分になるよ」
そうしみじみ言う新井さんの言葉を聞いて、僕はそっと拳を握りしめる。
――時代の流れに取り残されたもの――それが今の僕だ。
「……勇元君、そう力んだり緊張したりせずにね。どうしても辛くなったら、式の途中でも体調不良を言い訳にして帰ってきていいんだから」
「す、すみません……」
「そういう時は『すみません』じゃなくて『ありがとう』でいいのさ。さ、電車に遅れるといけないし、お食べ」
「は、はい。いただきます!」
凄く美味しい食事に手を付けながら、僕は過去を振り返る。
中学3年の時、僕は両親の転勤に合わせる形で、田舎の学校に転校することとなった。
……だが、そこで待ち受けていたのは余所者に対する壮絶ないじめだった。
「コイツ、髪の毛で片目隠しててキモっ!」
「なよなよしててウゼー、女かよ!」
「ちょっと男子、こんな奴と一緒にしないでくれるー?」
「これだから都会育ちって奴は……」
「何こっち見てんだコラ!」
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