プロローグ SIDE:勇元 心

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「いじめられているだと? 滅多なことを言うものじゃない。 仮にそうだとしても、時には自分の力で解決することも必要だぞ?」  孤立し、罵声を投げかけられ、時に陰で暴力を振るわれ、教師にも見放され、とうとう僕は学校に行くことをやめ、自宅に引き篭もった。  両親は学校やいじめてきた生徒の親に抗議してくれたらしいけど、案の定というべきか効果も梨の礫だったらしい。  両親も都会出身ということで、仕事で軽んじられることが多かったらしいが、当時の僕にそのことを察したり気遣ったりする余裕は無かった。 「心、大丈夫よ。今は辛くても人生は必ずどこかで良いことが巡ってくるわ」 「心なら絶対に立ち直れる。だから今はゆっくりと休むんだ」  2年近く引き篭もる結果にはなったけれど、こうして今は地元に戻って下宿暮らしを始めることができるようになった。  そして今日、高校生として新たなスタートを僕は切る。  ここまで何も言わずに見守り続けてくれた両親には、感謝してもしきれない。 「新井さん、ごちそうさまでした」 「はい、お粗末様でした。さ、遅れないように早めに出なよ。道中も気をつけてね!」 「はい……いってきます……!」 「いってらっしゃい!」     
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