プロローグ SIDE:勇元 心

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 食卓を後にし、自室で準備を整えた僕は、いよいよ入学式会場へと向かうべく外への一歩を踏み出した。  止まった流れを再び動かし始めるために。  ◇◇◇  会場方面へと向かう電車の席で、僕は周囲の様子を伺っていた。  理由は引き篭もっていたがための対人恐怖も一つだけれど、同じ入学式会場に向かう子達の様子を知りたいという純粋な興味もあったからだ。 「ねーねー、例のあの噂聞いた?」 「あー知ってるー。自分の将来を占えるアプリの噂でしょー?」 「そーそーそれ! 『ココロノナカアプリ』だっけ?」 「それそれ! ホーリツでキョカされてないアプリとか超ヤバいよね」 「でもでも当たる確率100%らしいよ! 凄くない!?」  恐らく、元々友人同士で今日入学式に出席する女の子達なのだろう。  この時間帯でこの方面に向かう若者は、入学式に出席する生徒でほぼ間違いないからだ。  二人とも電車内であれこれと噂話をして、お喋りを楽しんでいる。  僕の入学した光天学園は、都会では今や普遍的となった通信教育制の高校だ。  体育や科学実験等の実技授業や、入学式等の行事のみ外部施設を借りて行い、座学の授業は自宅等の静かに学べる環境であれば、原則どこで受けても良いことになっている。     
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