僕らが思い出すその日のために

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+++  テストの日というのも理由の一つだろうけれど、今日はいつもより早めに登校する生徒が多かったらしい。  吉沢 遥希(よしざわ はるき)がホームルームの十五分前に教室の扉を開けた時にはほとんどの生徒が席について何やら盛り上がっていた。 「おはよ。」 「おはよう。」  コートをロッカーに入れてから席に着いた遥希(はるき)に近くにいた女子数人の視線が集まった。 「何?」 「吉沢くんの机の中、なんか入ってない?」  そう言われ、遥希は大して物が入っているわけでもない机の中を体を屈めてあらためた。 「なんかって、もしかしてこれ?」  小さなカードを取り出して見せると、やっぱりとでも言いたげな満足そうな顔でうなずき合っている。  登校しているこのクラスの生徒全員が机の中にカードがあるのを確認していたため、男女関わらず全員に宛てたものだろうと既に結論が出ていた。  少し緊張した面持ちで遥希はカードを開いて一通り読み、驚いた表情をして顔を上げた。 「何、これ。」 「ねえ、何だろうね。うちのクラスだけみたいなんだよ。でもK.I.なんてイニシャルの子はいないし、女子の机にも入ってたの。バレンタインにしては謎だよね。」     
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