僕らが思い出すその日のために

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 何も言わずに曖昧に頷いて同意を示す。普段から聞き役に回ることの多い遥希はさり気なく会話から抜けようとしていたのに、こんな事件のせいか今日は話の輪から外してもらえなかった。 「誰か心当たりない?」  微笑みとも困惑とも取れる表情で首を横に振った遥希に、「だよね」と全員が頷いてくれる。 「他のクラスの子が机の場所を特定できずに全員の机に入れたとか?」 「えー、好きなら知ってるでしょ。つか、カードよりチョコ入れろよ。」 「あははは、そうだよ、みんなにチョコ配ってくれ。」 「カード入れたってことは連絡先知らないんだよね。ストーカー?」 「ストーカーならなおさら席も連絡先も知ってるはずだよ。にしても全員分手書きとか暇すぎだし、英語で書くとか、意味が分かんない。」  かしましく推理が繰り広げられる中、話の継ぎ目に小さな声で割り込んだのは遥希だった。 「進路が決まってて、余裕があるやつなんやないの?」  おずおずと言った遥希に女子たちが同意している向こうから、ぱっと視線をよこした生徒がいた。 「ハルはそう思うの?」  女子の一群の後ろで別の生徒と話しながら真剣にカードを見つめて難しい顔をしていた谷津 敦人(やつ あつと)だった。 「そうなると少しは限定されるけど、イニシャルがK.I.だからこのクラスの子じゃないし、推薦決まった他のクラスの子がわざわざやったってこと?」
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