僕らが思い出すその日のために

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 敦人の問いかけに周りにいた全員の視線が再び遥希に集まると、場の中心になった本人は何回か瞬きをして困ったように視線を泳がせた。軽く握った手の甲で口元を隠しつつ何か言いかけたのに気付いたのは敦人だけだった。 「じゃあ、谷津(やっ)くんは何だと思うの?」  答えを待ちきれず、遥希の代わりに話を拾ったのは隣にいた女の子だった。遥希が何か言うかと待っていた敦人は、目を伏せた相手を不思議そうに見つめてから話しかけた女子に向き直った。 「俺も分からない。でもここまでやるのって本気に見えない? つか、その割にこれスペル間違ってるよな。」 「えーどこ?」  どれどれと周りが覗きこんだところで、敦人達の会話は担任の到来で遮られた。 「おーい、席につけー。ホームルーム始めるぞ。」
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