僕らが思い出すその日のために

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++++  自習の良いところは、昼休みを告げるチャイムの少し前に購買に行けることだ。三年の教室から落ち着きのない足音が階下に向かって行く。  三時間目が始まる前にさっさとお弁当を食べ終わっていた敦人は、購買で買ってきたコロッケサンドと揚げあんパンを机の上においたまま、肘をついて電子辞書で何かを調べては首を捻っていた。周りの友人と言葉を交わし、カードを眺めて不思議な顔をするのを数回繰り返したあと、大きくため息をついて背もたれに身体を預けた。 「よっしゃ、飯食おう。」 「何か分かった?」 「いーや、全然。」  笑いながら三口でコロッケパンを片づけて揚げあんパンの袋を開けている。  遥希は少し離れた席で他の友人と話しつつ、そんな敦人たちの会話を聞いていた。  高校生の移り気と受験生の忙しなさの前では一日の始まりの小さな事件は昼を過ぎれば忘れられ、放課後にはいつもの空気に戻っていた。誰もカードのことなんか話題にしない。それが遥希にとって嬉しくもあり、どこか残念でもあった。  敦人も気づいていないだろうな。まぁ、いいんだけどさ。  帰りのホームルームが終わると同時に遥希は立ち上がって帰り支度を始めた。
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