僕らが思い出すその日のために

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 ふわふわとした足取りで階段を降り、踊り場で立ち止まって窓の外に目をやると、冷たくて透明な空が見える。向きを変えて階段を半分ほど降りたところで上の方から明るい声がした。 「ハル! なあ、ハル! ちょっと待ってよ。」  心臓が跳ねたのは突然呼ばれて驚いたからだけじゃない。何となく気まずくて、思わず首をすくめて顔をマフラーにうずめた。  パタパタッと小走りの足音が近づいて、背後で止まる。ゆっくりと振り向くと、コートとデイパックを抱えた敦人が踊り場に立っていた。  逆光のせいで眩しくて、遥希は目を細めた。 「何?」  緊張したまま出した声は、遥希が思っていたよりもずっと固く階段に響いた。  「さっぶ! コート着るからちょっと待って!」  ぶつぶつ言いながらデイパックを遥希に手渡し、雑に丸めたコートを広げて腕を通し、ボタンを閉める。それからズボンのポケットをまさぐり、手摺に手をかけたまま待っていた遥希にカードを開いて突き出した。 「これさ、K.I.は遥希(はるき)のき?」
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