とける

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私は、先程まで 形を成していた。 突然 目が眩むほどの 閃光に、襲われた。 その激しい衝突に体はぐちゃりと削がれ、幾度となく潰され、執拗に刺され、私を酷い姿に変えた。 それでもまだ私は、微かに自分を保ったが、そいつは息巻き、目を血走らせ私を運ぶ。 ゴトリと音を立て、私はそこに無造作に置かれ、最期の時を察した。 その時 唐突に、苦しみ出したそいつは 胸を押さえ、使い古しのソファーに倒れ込む。 錆びたバネが、そいつの代わりに ギチギチ、ミシミシ ギィギィと音を立てる。 バタンドタンと、叫ぶことも出来ぬほどの痛みを味わい、そいつは息絶えた。 それから、1時間経った。 私は、先程まで 形を成していた。 今はただ 散らかったテーブルの上で バニラの甘い匂いを 漂わせるだけの ベタついた液体に なってしまったけれど。 終わり
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