チョコかと思ったら……離婚届だった。

た妻からの凍てついた一言。それだけ言って、晩御飯の出来ている食卓の席についた。どうやら逆撫でしてしまったらしい。よくよく考えてみれば、このタイミングで掃除は有り得ない。埃が舞ってご飯に降り積もるじゃないか。何をやってるんだ俺は。

　箸が食器に当たる音だけが鳴る。テレビを点けたいが、今点けると誠意が伝わらない気がする。静寂の時が流れたのち、皿洗いをかって出たけれども、妻からの反応は無い。しぶしぶ食器を片づける。終始無言。

　それからというもの、俺は、仕事が終わり次第なるべく早く帰るようにして、率先して家事をした。お風呂洗いもトイレ掃除も。普段はどちらも管轄外。しかし四の五の言ってられない。花のプレゼントもしてみた。プロポーズした時に送った花。用意するのに手間がかかったが、致し方がない。肩たたきも提案してみたが、こちらはあっさり拒否された。お土産にいたっては、無駄遣いしないで、と。そうこうしているうち、あっという間に一か月は過ぎていった。

　ホワイトデーの朝。妻にかける言葉は思い当たらず、沈黙のまま家を出た。仕事が手につかなかったのは言うまでもないが、バレンタインデーの義理チョコのお返しな