今度は自分で決めたいの

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亜弥はまた、中村に会いたくて頻繁にバーに通っていたが会うことはなかった 何かおかしいと思って 意を決してマスターに尋ねた マスターは重い口をやっと開いてくれた 中村様は今の会社を辞めて、お友達のやっている会社を共同経営するとおっしゃっていましたよ どこかへ行かれたんですか そうですね どこですか? 私は存じ上げません 亜弥は涙が流れるのを拭うのも忘れてひとり座っていた 私のせいでどこかに行ってしまったのではないか そう思うと告白しなければ良かったのか、と後悔していた 亜弥は中村のことを忘れられないまま日々に流されていた 一年半が経ち、もう会えないのかもしれないと思い始めた頃 バーのマスターに、もし中村さんが来た時に連絡してくださいとお願いしてあった携帯に着信が 中村様からお手紙が届きましたとのことだった その夜、バーに亜弥が行くとマスターはそっと手紙を手渡してくれた 急いで開封する 亜弥様 お元気ですか あの時、突然居なくなって 申し訳無かったです 亜弥さんの気持ちを受けるのは正直、怖かったんです 不幸にしてしまうのではないかと思いました あれから、かねてより友人から共同経営しないかと誘われていた仕事に踏み出そうと決心して飛び込んだのです それも、亜弥さんの気持ちを僕に話してくださったことで前向きになれたからです ありがとう あれから亜弥さんは良い出会いはありましたか? もう、ご結婚されたかも知れないですね 私は北海道の函館でカフェバーを経営する仕事をしています よかったらパートナーの方といらしてください お元気で 中村航 亜弥は会社に辞表を出しアパートも引き払い函館へ飛んだ 後先は考えない 退路を断ち行こうと決心して あれから一年後 亜弥は中村のカフェバーで コーヒーと一緒にトーストを作っていた 厚切りトーストに冷たいバターを小さくカットしてハチミツをかけたメニュー バターが溶けてハチミツとお口の中でコラボして人気メニューになっていた どうやら、しあわせな事に亜弥は中村の大切な人になれたようだ 、
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