今度は自分で決めたいの

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私、このひと好きだわ と、自然に心の中に湧き上がってくるのに気付いた 年上の大人の男性 あの、少し外を歩いて帰りませんか と、自分でも驚くほど積極的に言葉が出た マスターがドアを開けて外を見てくれた 雨は上がったみたいですよ そうですか じゃあ、途中まで一緒に歩きましょうか と、言ってくれて 二人で店を出た あの、失礼な事をお聞きしてもいいですか? あ、何かな? このまま、ずっと お一人でいらっしゃるつもりですか? いや、どうかな? もう、おじさんになっちゃったからね ・・・おじさんだなんて 素敵な大人の男性って感じですよ ありがとう(ニコッとした) あの・・・あの・・ あの~私じゃダメですか えっ? 亜弥さんが僕と? だって亜弥さんは僕より20くらい若いんじゃないかな ・・・からかわないでよ からかってなんかいません 親御さんが反対するよ 僕が、親なら反対するからね そう、言ってくれただけで とても嬉しいよ ありがとう いいえ、反対されたって平気です と、言って亜弥は中村の手を取った 中村はそぉっと包むように抱いてくれて ありがとう 亜弥さんの気持ちは嬉しいよ と、言うと抱いた手をほどいた 今はこの雰囲気に酔っているだけだよ 悲しそうな顔をした亜弥の手を取って繋いでくれた 二人はしばらく黙って歩いた じゃ、ここでお別れしよう 中村が繋いだ手に一度グッと力を入れて握った そして離そうとしたとき、亜弥は夢中で中村の胸に飛び込んだ 好きなんです 中村は黙って亜弥を優しく抱きしめた ありがとう 亜弥さんは素敵だよ と、言って口づけしてくれた 亜弥はその温かいぬくもりと溶けてしまいそうな口づけにしあわせを感じていた あぁ、このままでいたい 夕介の海外転勤は付いて来てと言われなかったが、自分が行く気なら押し切ってでも付いて行ったはずだ でも、そうしなかったのはそれだけの思いしかなかったのではないか 今度、人を好きになるときは自分が好きだと思える人を自分で選ぶことに決めていた 唇を離すと中村はタクシーを止めて亜弥だけを乗せた 今日はありがとう 気をつけてね タクシーの運転手にお金を渡し車を出してくださいと告げた 亜弥は また、あのバーで と、言って手を振って別れた
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