『Go west』

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まめたくんが、ふいに足を止めている。 道ばたにある、小さなおやしろ。 その前にある、おいなりさんの小さな石像が、よこに倒れている。 『ああ、【けっかい】が…やぶられているようだな』 のばくんの声にも、さすがにあせりの気配がある。 『まずいな』 まめたくんが、ぼくを見る。 『まにあえばいいが』 ぼくも、まめたくんを見返している。 『ちかいね、きっと、かなりちかい』 じゅりちゃんの言葉に、ぼくたちはみんな、うなずきを示している。 たい列をととのえたのち、石段をのぼり始める。 顔中の汗を手でぬぐいぬぐい、もっと登る、さらに登る。 古い神社の前のお手水場で、順々に、口をしめらせる。 そして、ぼくの番。 冷たい水で、手を冷やしていると…。 のばくん。 どうしたの? けわしい目線を、上空へと向けたまま? 『じゃあくな、じゃあくなけはいがある…、このあたりだ』 と? のばくん? え? のばくんの顔と、頭の上の空とを、ぼくたちは繰り返しに見る。 『でも…、ないよね、なんにも』 じゅりちゃんが、小さな声でつぶやくように。 『いや…そこだ、そこからだ』 と、のばくんは。 まめたくんのにぎっている、木の棒の影の先。 その先にある、大きな丸い石を指差しながら…? 『これか…?』 『これ、だね』     
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