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〈暴れん坊将軍①〉
江戸S藩下屋敷。家老が藩主に内々の報告。
「殿が御執心のお里の件ですが・・・」
「何、ついにかどわかしに成功したか」
「いえ、そのかどわかしを毎回邪魔する徳田新之助と云う旗本の件で」
「あの妙に清々しい若侍のことか。ひとの恋路を邪魔する不埒な奴め」
「いやそんな若くはないのですが」
「そうか若くないのか」
「その話題じゃなくて。奴の正体はどうやら上様・・・」
家老は、あたりを見廻すと声をひそめる。
「上様、吉宗公の仮の姿のようです」
生娘の愛玩を趣味とする藩主の顔色が変った。
「なんだと、それではこれまでの悪行すべて知られてしまっておるのか。すれば身どもは切腹、お家断絶は必至」
悲観の涙が流れた。
「我ら家臣も路頭に迷うことに」
「・・・何とかならぬか」
「調べたところ、徳田新之助にはおおやけに出来ぬ趣味がござるとのことで」
「何、趣味とな?」
「はっ。それを使えば、事をうやむやに出来るかと・・・」
「してその策とは・・・」
家老の耳打ち。やがてその奸計に安堵した藩主は高らかに笑った。
「そちは知恵者よのぉ」
「恐れ入ります」
②へ続く
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