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第一章
雪が降っていた。白くやわらかな大粒の雪。いつから降り続いているのか、街はすっかり雪景色。街の灯に照らされて、しんしんと降る雪の映えること。
ボクはその様子を真っ暗な空の上から眺めていた。もちろん人間では無い。天使――ということにしておこうか。きっとその説明が一番分かりやすいだろう。
十二月二十四日。
人間たちが聖夜と騒ぐ特別な日。街は煌びやかなイルミネーションに飾られ、それは賑やかなものだった。
「神様なんて信じてもいないのに。それでもこれだけ盛り上がれるんだから、ある意味すごいよ」
信徒たちが宗教的祭事に盛り上がるのはボクにも分かる。けれど、この国の人間たちは違う。もちろん中には宗教的祭事として参加している者もいるんだろうけれど、大多数にとっては宗教的意味合いなんて関係ない。もはや何のために盛り上がっているのかさえボクには理解出来なかった。
けれど、それが悪いとも思わない。むしろ感心すらしているんだ。
良くわからないものでもとにかく盛り上がり、楽しむ。それが活力となり日々の人生を謳歌出来るのだから、素晴らしいことだ。
――でも、人間たちの盛り上がりは予想以上だった。
空の上からでも伝わるほどの活気に少しあてられたらしく、ボクは街の喧騒を離れ、郊外の方へと夜の空を泳いで行った。
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