〈スケルトン・ボマー〉

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〈スケルトン・ボマー〉

 不意に路地が途切れて、少しは開けた場所に出た。左手に古びたアパートメントに見える建物があった。実際、古びたアパートだった。少し前に、誰かが再開発を言い出して、住民をすべて追い出した。その後になって、その誰かが誰なんだか、当局の誰も知らないことが分かった。〈スケルトン・ボマー〉が入り込んだのは、更にその後のことで、浮浪者の棲み着き防止を名目にして、当局から金をせびることまでやっていた。  ドイツ人が見たら泣き出しそうな、コンウェイのBMWの脇に、シェヴィを停めて、俺は彼女を促して降りた。  元アパートは三階建てで、棟の中央に吹き抜けの階段室に通じる入り口があった。その手前の短い階段に冷蔵庫みたいな男が座っていた。名前はニールといった。元SAS(スペシャル・エア・サービス)のレンジャーで、フォークランドではアルゼンチン軍の兵士を1ダース以上殺したと自称していた。彼の酒量が増える前は、哀れなアルゼンチン人は三人だけだったことを大勢が覚えていた。けれど、誰もそのことは口にしなかった。永年のトレーニング不足で鈍っていたとしても、今でも彼が素手で人を殺せることは事実だったからだ。それに、脂肪のせいで冷蔵庫のサイズは年々大きくなっていた。
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