〈スケルトン・ボマー〉

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 熱いコーヒーが飛び散った。ニールに放り出されたカップは、流しにぶつかって割れた。俺が振り向いたとき、彼は既に小部屋を出て、階段を駆け上がっていた。天井を見上げた。今や、コンウェイはまるでバンジーのように泣き叫んでいる。それでも、カップを置く余裕くらいはあるだろう。  電熱器からケトルを外してから、俺はニールの後を追った。誠意を見せてやるつもりで、階段は二段飛ばしで上がった。足手まといだと言われることは分かっていた。二階の廊下をのぞき込むより早く、ニールがコンウェイの部屋のドアをぶっ叩く音が聞こえていた。 「ミスター・コンウェイ。ドアを開けてくれ」  廊下の奥の部屋から、片目を大きく腫らした女のコが一瞬、顔を見せた。先月来たばかりの、うちのムーヴィースターの一人だった。俺が何か合図するよりより先に、一瞬で彼女は引っ込んだ。もちろん、怯えていた。叩くのを止めたニールは、狭い廊下でできる限り扉から距離を取ろうとしていた。  ドアまで壊すのはやり過ぎじゃないか――。そう思ったけれど、口には出さなかった。ニールの目が吊り上がっていたからだ。大きく息を吸って、歯を食いしばると、ニールは肥満体に似合わない、素晴らしいダッシュを見せた。ー発で扉は大きく弾けた。
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