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変なことを思い出す日だ。俺はそう思い、いっそう頸をすくめた。
あのコの呼気の中なら、ダイヤモンドくらい見えてもおかしくないと俺は思っていた。そのくらいきれいなコだったから。けれど、永遠に続くように思えた、あの十二月、ダイヤも結晶も最後まで、俺は見つけられなかった。
港の濡れた路地で、俺は小走りになった。凍てつくような風は切りつけるように、俺の尻を叩いた。そのまま、俺は桟橋に駆け上がった。ブーツの下で、古びた板材が軋んだ。
顔を向けると、少女は怯えたように後退った。けれど、フードの下から俺を睨めつけている視線には、怯えとは無縁の強い意志がこもっていた。ポンチョの下で、彼女は何かを掴んでいた。多分、鞄だろうが、銃かも知れなかった。もしかしたら、銃身を切り詰めた散弾銃かも知れないし、血に飢えたサムライソルジャー向きのカタナの可能性だってあった。努力して、俺は笑ってみせた。表情のストックから、精々人好きがするような奴を引っ張り出して、顔に貼り付けた。端からは、そうは見えなかったかも知れないが。
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