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「お迎えに上がったよ」俺は言った。「あんた、〈スケルトン・ボマー・ムーヴィ・プロモーション〉の新人だろ。あんたが契約したときは別の社名だったかも知れないが」
少女は動かなかった。ただ俺を睨めつけている。
「えっと――ああ、待てよ。ひょっとして、あんた、俺の言ってることが――」
「言葉なら解る」少女は英語で言った。「でも、あんたが言う通りの人間だって証拠は?」
俺は天を仰いだ。「〝秋の日の/ヴィオロンの/ためいきの〟」
「……何?」
「レジスタンスにDディの決行を知らせるために、チャーチルがBBCで流した暗号さ。知らないか?」
「だから――」
「だから」俺は彼女を制した。「あんた、合い言葉でも決めたか? 割り符でも持ってるか? 俺はどうすれば、俺が俺だって証明できる?」
それでも少女は俺を睨めつけることを止めない。俺はボマージャケットとジーンズのポケットを探った。いつだったか、自称プロデューサーのコンウェイにもらった、汚れた名刺が出てきた。
「これでどうだ?」
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