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「肩書きが違う」名刺を見つめて、少女は言った。「〈オーバー・リミット・エキサイティングス〉代表取締役になってる」
「言ったろ。会社の名前はしょっちゅう変わってるんだ。いろいろあるんだよ」
ため息を少女は吐いた。「少なくとも、あんたはあたしが、この便で来るってことを知ってた」
「確かに」
彼女は顔を上げ、ようやく首を縦に振った。
「分かった。信用する」
「なら、急げよ。一雨来そうだ」
「うん」
桟橋を降りるところで、俺は立ち止まった。「なあ、あんた。訊いていいか。俺たちの会社がどんな――」
「知ってる」
少女はフードを外していた。きれいなコだった。あのコほどじゃないが。〈スケルトン・ボマー〉がヴィザまで取ってやって、呼び寄せる女のコがきれいでないはずがなかった。
ただ――。子供だった。
ほんの子供だった。俺は目を逸らした。鈍色の海がスローモーションでのたくっていた。
顔を、俺は戻した。少女は俺を見つめていた。フードの下からのぞいていたのと同じ、敵意に満ちた、冷たい世界を怯むことなく、にらみ返すことに慣れた目だった。
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