汚れた十二月

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「なんだ? また呼んでみただけか?」 「違う。――恋人いる?」 「なんだそりゃ」 「――いないの? そもそも」ニヤと笑って、「いたことある?」 「今は」俺は答えた。「いない」 「今は? ずっとの間違いじゃなく?」 「昔はいた」 「ほんとに?」 「ほんとさ」 「ふん……きれいな人?」 「ああ。最高さ」 「あたしより?」 「もちろん」俺は即答し、イダは笑った。 「ふーん」 「信用してねえな」 「ふふん」 「……俺と同い年で、おまえなんかよりずっとグラマーだった。でも、それは出るべきところが出てるって意味で、体つきはおまえよりも華奢かな。それに――」俺は言葉を探し、結局、 「――詩人だった」  彼女は鼻で嗤い、俺は押し黙った。  じゃあ、いったい、あのコのことを、他にどんな言い方をすればいいんだ? そう、俺は思う。どう呼べばいい? あのコを呼ぶ、他にどんな言葉があると言うんだ?
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