必殺……!?

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 もだもだしている内に、ガチャリとどこかの扉が開く音がした。 「……どちら様?」  ストレートに『あんたら不審者ね』と言いたげな女性の声に振り返ると、おたついた仲間と視線が合う。 「なっ、何でもないです、失礼します!」  明らかに『何でもあるだろう』と突っ込みたくなる声音で叫んだ仲間は、玄関先の門扉から一目散に逃走した。裏手にいた仲間も同様だ。  最後に残ったオレも、勿論ガレージ門扉を飛び越えて仲間のあとを追った。 ***  さて、どうしてアタックが失敗したのか。  オレたちは疑問に首を捻り、散々仲間内で怒鳴り合ったが、敗因はさっぱり分からなかった。  案外、アタック対策として知られ始めた、鍵を電波遮断用の缶ケースに入れる、アルミホイルで包む、などを実行していたのかも知れない。  そんな風に考え始めた頃、正解が数日後、テレビで流れていたワイドニュースで偶然知れた。 『――ところで先日、某県某市で未遂に終わったバトン・アタックの被害に遭いそうになった女性に話を聞くことができました。女性・Aさんによると、Aさんは、今時珍しいアナログなお車をお使いだそうで』  アナログ? どういう意味だろう。  すると、スタジオゲストの一人が、オレの疑問と全く同じことを口にした。 『アナログとは、どういう意味でしょう』 『いや、実はですね、リモコンキー搭載じゃなかったんだとか』  は? 『便利になれば皆々そちらへ乗り換えると思いがちです。当然、犯人グループもそう思ったからこそ、下調べもそこそこに端から犯行に及んだんでしょうけど……』 『つまり電波を拾おうにも拾えず、勿論反応もしない車に一生懸命電波で働きかけていた、と……』  時に、ハイテクはローテクに勝てないこともある。  スタジオ内の爆笑に釣られて、オレたちも笑うしかなかった。 【了】
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