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球技大会の運ボラにはなれなかった。 アーチェリーの選抜選手だの、足を骨折中のヤツだので枠が埋まってしまったのだ。仕方ないから、葉山に誘われるままバスケにエントリーした。 「……で、葉山は、なんでバスケ?」 「高橋に習いたいからに決まってんだろ」 高橋さんは県の選抜チームに選ばれたこともある、女子バスケ部のエースだ。球技大会ではドッヂボールにエントリーしている。バスケ部員は、バスケでの参加を禁止されているからだ。 その代わり、クラスのバスケチームのコーチ役を引き受けてくれていた。 「なんだお前、高橋さん狙いだったの?」 「ちげーよ。……お前、わかんねえの? コレだよ」 葉山は、胸のあたりに両手を持ってきて、重みのあるものを上下に揺するような仕草をした。 「……マジで分からない」 「シュートの手本、見してもらえるじゃん。そしたらさ、こう胸がユサッと……ユサッとだな……」 幸せそうな葉山を見て、つい笑ってしまった。 「オッサンか」 「いやむしろ健全な若者だろ」 「高橋さんに言ってくる。俺たちの指導はしなくていいと」 「ちょ……、お前マジで言ってんの? あの巨乳のユサッを間近で見れるチャンスなんだぜ?」 葉山はけっこう本気で言っているようだった。俺は苦笑した。高橋さんも気の毒に。 「その前に、中間テストだけどな」 「あー、タリーなー、もー」 葉山は頭を抱えた。笑っていると背後から声がした。 「羽多、バスケにしたんだ」 声だけで、誰か分かる。思わず身体が強張ったけど、さり気なさを装って振り返った。 「矢田は? やっぱりドッヂ?」 「うん。よけてよけて、よけまくるよ」 相変わらず、涼しげな目元を和ませて優雅に笑う。そらしたくなる視線をなんとか留めて、不自然にならないよう会話を続けた。 「そのガタイで、よけまくるのは難しいんじゃねえの」 「小学生の頃は、いつも最後まで生き残ってたんだよ」 「外野にしてもらえば?」 「うーん、なるべくボールに触んないのがいいと思うんだよね。外野だと自分からキャッチしにいかないといけないだろ?」 「でも、大下が今年も一列作戦やるって言ってたぜ」 葉山が口を挟んできた。大下というのは、ドッヂボールチームのリーダーだ。 「一列作戦って?」
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