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それは、朝の10時ごろのことだ。
「おっ、あぶねぇな。何かあったのか?」
「誘拐事件らしいですよ!」
「そりゃ大変だな。頑張れよ」
男が金髪を揺らしながら歩いていると、また別の男とぶつかりそうになった。
「なんだよ、今日は慌ただしいな」
「子供がいなくなったって通報があったんですよ!!すみません、急ぎますんで!」
「あー、さっきの誘拐のことか?」
あっちでもこっちでも皆が走りまわっているのを横目にしながら、男は震えだした携帯を取り出す。
そこに表示されている名前を見ると、男は耳に当てて話し出す。
「どうした?」
『問題発生』
「典人、それだけで俺がその問題とやらが何かを分かるとでも思ってんのか?」
『思って無い。周りに人いるか?』
「あー・・・そういう内容か。ちょっと待て。場所変えるから」
そう言うと、男は近くにある資料室に入り、中に誰もいないことを確認すると、再び話し出した。
相手の男、典人が淡々とその発生した問題を話している間、金髪の男は髪の毛をいじりながら相槌も打たずにただ聞いている。
典人が一通り説明を終えると、ようやくここで口を開く。
「典人、他の奴らは動かせそうか?」
『動かせないって言っても、動かせって言うんだろ、芥子乃は。大丈夫。さっきからお前に指示されるだろうって、こいつらずっと待機してるから』
「そうか。なら、今からお前らにしてもらうことを話す」
芥子乃と呼ばれた男がそう言うと、典人は自分の携帯をスピーカーにして、周りにいる3人の男たちにも聞こえるようにする。
芥子乃が適当に指名して行動を支持すると、1人、また1人と指示された順番に部屋を出て行き、最後には典人が残った。
「俺は俺で探すから、お前はあいつらのフォロー頼む」
『わかった』
電話を切ると、芥子乃はまた別の番号を並べて通話を押す。
10回以上鳴ってようやく出た相手は、芥子乃の名前を聞くこともなく、耳を傾ける。
「俺だ。実は聞きたい事があってな」
『なんでしょう』
「あいつ、そっちに行ってねえか?」
『何かありました?』
「実は・・・」
芥子乃は、その電話相手に自分たちの周りで起こっていることを簡単に説明すると、相手はすぐに状況を飲み込んだらしい。
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